精密工学会 経営知識学専門委員会

最終更新日 2005年6月7日 


1.本専門委員会の設置趣旨
 近年,製造業を取り巻く環境は多様な変貌を遂げており,とりわけ,高度に進んだ情報環境下における経営管理に関わるマネージメント手法は急速に変化しています.たとえば,ERP,SCMへの関心は高く,その効率的経営の実現のためにはより高度な経営判断が必要となっております.また,キャッシュフローを中心に経営の意思決定を行うこと,また生産現場におけるキャッシュフローの把握の重要性も広く認識されています.このような環境下において,従来の実績に基づく意思決定から,経営的な意思決定をより現場に近い予測を加味した意思決定へ転換することの重要性も考えられます.さらに,整備の進んだ情報ネットワーク環境の元に意思決定の実時間化が企業の優劣を決めるといってもよい状況となりつつあります.

 例えば,SCMに参画する上において自社の生産余力とSCMに参画することによって見込まれる受注生産量の関係を時間的な変化を見込んで意思決定するためには,各時点における生産現場の能力予測を必要とします.また,それが他の受注,あるいは計画生産にどのような影響を与えるのかを知ることも必要です.これらを総合的に,しかも迅速に判断できるようにするためにはどのような体制を整備すべきでしょうか?

 海外に生産拠点を展開している際には各部門がどれだけの成果を上げているのかをキャッシュフローの面から押さえておかなければ適切な部門の評価はできないでしょう.また,何処かの部門の投資効果を考える上においては過去の実績で評価するのではなく,投資後の全体的な観点からの評価を予測に基づいて行うことが必要になるでしょう.また,グローバルな調達,販売を効率的に行うためには,国際ロジスティクスの効率的な運用について考えなければなりません.

 シミュレーション技法はよく知られているように生産の計画段階で有効なツールとして広く利用されています.しかしながら,多くの場合,計画段階における使用が終わると、折角作ったシミュレーションモデルも役割を終えてしまうのが実状であるといえるでしょう.一方毎日の生産現場においてはスケジューリングシステムの中に組み込まれた形でシミュレーションは実行され,運用効率の向上に大きな役割を果たしています.現段階ではこれらのシミュレーションモデルはそれぞれの目的に適したものを個別に構築することにより利用されており,事前の計画段階で作成されたものとは別のものとなっています.
 離散型シミュレーションに着目しますとなぜ毎日の運用や意志決定に利用されていないのだろうかということが気になります.この大きな理由のひとつは従来の離散型シミュレーションの利用の場が時間と個数に注目していたためではないでしょうか.既に述べたようにキャッシュフロー経営に必要なデータを離散型シミュレーションが創出することができれば,離散型シミュレーションが毎日の経営的,運用的な意思決定に不可欠なものとなるのではないでしょうか.もう一つの理由としては,ダイナミックに変化する実工場のモデル化の困難性が挙げられるでしょう.ディジタルファクトリーとして製品の開発から生産準備までのディジタル化に対して,実際の生産工場の実体とその運用の整合性は必ずしもうまくとれていないのではないでしょうか.このようなIT時代における離散型シミュレーション技術の利用について製品開発から製造まで,工場から工場群へ,製造業からサプライチェーンへといった多面的な観点から議論し,各局面における問題点を明らかにするとともに,そのソリューションを考えていきたいと思います.

 このためには,離散型シミュレーションソフトウエアのベンダーあるいは販売をされている方々と,シミュレーションを既に行っている方々はもちろん,このような環境下で何かしなければならないと考えておられる方々が集まって,新しいシミュレーションの利用法,経営的意思決定支援ツールとしての必要機能の明確化,それに基づく新しい機能を有するシミュレーション技術の開発について考える機会をもてればと考えます.
 本専門委員会はこのような意図を持って展開していきたいと考えています.積極的に議論を戦わせることによって何かを生み出したいとお考えの皆様の参加をお願いします.もし,ご自身の部門では一寸という場合にはより適切と考えられる部門の方にご紹介いただければ幸いです.



2.研究計画

○第一年度(2005年度)前半
    □基本調査 各メンバーの問題意識の表明
    □シミュレーション技術の課題
    □シミュレーション技術の利用実態
○第一年度後半
    研究開発事項の整理、要求表現(WGによる提案原案の作成)
○第二年度(2006年度)
    要求表現の詳細化とそれに基づく開発構想


3.会費


  年間 10万円

4.開催予定回数

本委員会 年間4回程度
ワーキンググループ 年間4回程度


5.組織構成

役職 氏名 所属等
委員長 藤井進 神戸大学教授
幹事 小野里雅彦 北海道大学教授
幹事 日比野浩典 (財)機械振興協会 技術研究所


  現在の会員数:
   大学メンバー数:12名
   企業メンバー数:17名


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お問い合わせ先:
幹事:日比野浩典
hibino@tri.jspmi.or.jp
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